スキーに挑戦中の8歳のねねちゃん。
シーズンインに向けて、これまでよりも長い板でのトレーニングに入った。
今まではコントロールできていた板が、全然いうことをきかない。
そんな板で、転んだら血だらけになる可能性もあるサマーゲレンデの急斜面を泣きながら降りてくる。
「この板、もうヤダ!」と脱ぎ始めた。
今度のシーズンインで勝負するためには、長い板になれる必要がある。
このサマーゲレンデはそのための時間だから、1本でも多く長い板で滑ってほしい。
こういう時の声掛けは、やはりちょっと悩んでしまう。
叱ってもだめだし、なだめすかしてもダメだと思う。
まっすぐにパパの気持ちを伝えて、まっすぐな寧音ちゃんの気持ちを信じるようにする。
「その板、慣れないから大変だよね」
「うん」
「やっぱ急斜面でなれない板は怖いよね」
「この板、引っかかって全然いうこと聞かないから嫌だ」
「パパは、その板でもう1本滑っても ねねちゃんのことを”すごい”って思うし
ここで逃げても”ねねちゃん、すごい!”って思うよ。
ねねちゃんが自分で決めればいいよ」
彼女にとっては、嫌な言いかただろうな・・・と思う。
あえて「逃げても」とさらっと伝える。
その言葉を聞いて、パパが何を言いたいか彼女なりに考えているようだった。
「ここでもう一本、攻める気持ちが作れるかって、パパはすごく大事だと思うよ。
上手に滑るとか、早く滑るとかじゃなく、勝負する気持ちがあるかどうかのほうが大事」
少し考えて、
「パパにそう思われたくないから、もう一本行ってくる」
といってリフトに向かった。
”そう思われたくない”というのは、逃げたと思われたくないということだ。
本当に、8歳の娘を尊敬する。
ギザギザの剣山のようなサマーゲレンデ。転んだら普通の雪よりも痛いはず。
その中で、慣れない板をコントロールしながら、急斜面を降りてくる。
その環境で、「怖い」と泣いた後で
「もう一本滑る」を選択できるのって、本当に勇気が必要なことだと思う。
ご褒美とか、甘い言葉では選べないんじゃないかなって思う。
彼女の内側から出てこないと「もう1回滑る」は言えない。
次に滑り降りてくるときは下で待っていて、娘を抱きしめた。
「すごいね! さすがだね。 長い板、少し慣れてきてるね!」
最後は、はきなれた短い板で滑ってきたいらしい。
「前の板でもう一回滑ってくる」と、リフトに向かっていった。
今年もサマーゲレンデが始まった。
娘の挑戦を近くで見られるのが、嬉しい。